-Interview with Toshinori Kondo (2003.5.3)-


... Truth in Chaos ...

Kondo : 今は高度資本主義消費社会だから、どうなるか分からないけど、でも唯一信じたいのは、オレたちは肉体を持って、家族も作り友達も作りケンカもし、年とり、なんやかやっていう中で、芯棒として何が一本通ってるんだろう、と。その芯棒っていうのは何なんだろう、と。生まれる前から通ってる芯棒、生まれて、死んでからも通ってる芯棒があるとすると、それは何なんだろうっていうのがね。

 本来は、表現してる奴らは一人一人、考え、実践しないといけないことなんだろうけど、99パーセントは考えもしない、何もしないっていうね。

 でもそれもまた、宇宙から見たらそれでええのよ。考える必要もないのよ。そんな、芯棒がどうやこうやって、そんな面倒くさいことを考えるのはごく一部で、そのままやってればええのよ。

 美味しい砂糖があるからって金があるところに行って吹いたり、弾いたりする奴もおるけど、それでええのよ。何が真理かってのは本当に分かんないよ。

 そこに神さんがいるって言って、神さんのことを知ってる奴がじゃあ世の中を変えられるかって言ったらそんな奴らが世の中を変えたことなんかないんだから。

 でも確かに、不思議なことに蛍が甘い水に引かれていくように、人間の癖として、そういう風に目にも見えない、音にも聞こえない部分に惹かれるところが人間の魂にはあるんだよ。それがなければ、もっと簡単だよね。でもあるからややこしい。それは確かにある。

 どんなにいいセックスしたって、その女は明日離れていくことさえある。どんなに仲いい友達だって、また明日にはケンカするかもしれない。逆に、どんなに憎み合っている奴に対しても、アイツの言うことも一理あるかなって思うこともあるし。

 人間、全部忘れ去っても、太陽と星とお月様にしか向かい合っていないような奴でも、やっぱりどこかには他のこともあるんだよ。

 オレたちは現代に生きてて、お釈迦さんの話、キリストさんの話、モハメッドさんの話っていうのは2000年前の話、何千年前の話として伝わってるけど、なんでオレたちはアイツらのことを気にかけてるのかね。

 生命の本質として、やっぱり無限大・無限遠と一瞬、無限と一瞬っていうロジカルには絶対に合体しない屁理屈を、どっかで解消したいっていう生物としての意識が働いてるんじゃないかな。

 それをもっと大きく見たらロボットなんだよな。ロボットっていうのは人間にコントロールされて、寿命が30年しかないと仕組まれたら、31年生きたいって思うのと一緒やな。

 オレたちは神さんにとってみたらロボットかもしれないよ。人間が作ったロボットじゃなくて、神さんが作ったロボットが人間かもしれん。DNAのレベルである種情報操作されてて命の仕組みがある、と。

 それで命を越える活動を、魂の癒しみたいにして追いかけてるだけかもしれないな。絵描きは12の色を使うように、オレたちは12の音を使ってやってるわけだけど。

 「神」っていう言葉を「自然」に置き換えたら、神さんが仕組んだ罠にはまってるのがオレたち表現者だとすると、自然がしかけた罠にはまって、それでなおかつ「いったい何なんだろう?」とやってるのがオレたち、単純にミュージシャンだったり絵描きだったりするかもしれないけど。

 でもそれは、本当に一人ひとりの人間の中にそういう気持ちがどこかにあるはずだから、オレたちが多少なりとも代弁者のように作業してるだけの話かもしれない。

 トランペットがうまく吹けるだとかいうことは、単なる技術だからそれは何年間か頑張ればある程度までは行ける話だからね。でもそれ以降っていうのは、それとはまた違う話だからね。

 じゃあなんでそこまで求めるのかっていうのを延々考えると、本当にトリッキーな、人間がロボットに仕組んだソフトウェアの仕組みのように、オレたちも神っていう存在によって仕組まれただけの話なんだよ。

 それでも、アンドロイドの夢があるように、人間にも夢があって、オレたちが仕組まれていたとしても、やるしかないのかなぁ、と思う。

 今、現代社会におけるほとんどの約束事ってのは、例えば朝8時に起きて9時までには会社に行かなきゃ行けないっていう約束事、これは何の根拠もないんだよ。なんで朝の9時までに会社に行かないと怒られるんや。これはどんな議論をしても、何の根拠もないよね。それでないと会社がうまくいかないんだって言うなら、じゃあ最初から午後2時から始まる社会にすればいい。世界中が午後2時から夜の12時まで仕事したって、それでいいんだから。ただお陽さんが上がってると間に仕事した方が能率がいいとかっていう理屈はあるけど、そんなものは理由にならないよ。

 今の人間社会のほとんどの、これが基盤になってるっていうその「基盤」は、基本的には何の理屈もない。なんで一夫一婦制かっていうと、そんなもの何の基盤もないよ。それが、人間が何千年何万年培ってきた上での愛情ってものを表現するのに一夫一婦制が一番いいっていうのが今の理論だけど、それだって何の根拠もないと思う。だからこそもうちょっとしたら、精子バンクができて、子供産むようになるってことも人間は考え出すよ。

 そういう風に、嵐の後に多摩川に木切れがブワァーッと浮かんで泥水でグチャグチャになってるような、それがまさに人間の人生そのもので、きれいな水の上に浮かんでる小さな竹舟みたいなものとはまるっきり違う。どんな天気のいいときでも、ずーっと流れてるのは泥舟で、ゴチャゴチャで、何も分からなくて、グチャグチャしてるだけだっていうのがベーシックな認識かなと思う。

 あらゆるものには実体はないって仏教は言ってるけど、今の資本主義でもやっとこさそれが分かってきてるでしょ。あらゆる企業がつぶれてきてるんだから。

 ……ヤバい、最後に楽しい話しないと(笑)。

The End