-Interview with Toshinori Kondo (2004.11.28)-
... "Made in Japan" ...
Ｂ : 近藤さんは、21世紀の音楽を新しく作るものとして、誰を焦点にしてますか？
Kondo : 今の、実際の子供かもしれないよ。誰かは分からないよ。音楽なんてものは基本的にアナーキーだからね。そこから生まれる土壌として、やっぱりアナーキーな土壌がないと生まれないよ。
Ａ : アナーキーであってなおかつ、シンプルに人をかき立てるような音楽でないと、という面もありますよね。ジャズにしろヒップホップにしろロックにしろ、最初に登場してきた時はみんなダンスミュージックだったわけじゃないですか。
Kondo : ダンスミュージックということは、下半身に作用する音楽だよね。心に作用する音楽、頭に作用する音楽と、最低でも人間の人体においては３つに分かれるわけだよ。下半身がリズム、心がハーモニー、頭がメロディーってね。
よく昔、バンドやってるときにオレがいつも怒鳴りまくってたのは、「黒人のチンチンを入れられて、ただチューするだけで満足してるのかオマエらァ！」ってね。チンチンもやっぱり日本人のチンチンを入れてチューも日本人がやらないといけないのに、なんで黒人のビートを真似して黒人っぽくやってんだって。それが20世紀の音楽だからね。間違いなくビートは黒人が作った。グルーブの原点はね。だからずっと、20世紀は黒人のチンチンが支配してたんだよ（笑）。
日本の音楽シーンでいつも起こることは、例えばこの10年間では「レインボー2000」が登場してからレイブとかクラブミュージックとかが日本の中でも動きがあったわけじゃない。でも野外のパーティのレイブもどんどん矮小化されてきて、東京のクラブもどんどん面白くなくなってきた。その原因はたった一つなんだよ。借りモンでやってるからだよ。アメリカ、ヨーロッパのDJ連れてきて、そいつらの借りモンでやってるからだよ。そうじゃなくてオレたちのものでやらないといけないわけだろ。そうすれば続くんだよ。
例えば、今度12月25日の麻布十番にできる新しいクラブでライブをやるじゃない。それでイベンターの男の子が２人、手伝ってくれてるんだけど、その連中がオレのスタジオに来て「近藤さん、東京発信をやりたいんです」って言うんだ。「それはスゴいよな、オレなんかもっと若いときからエンエン言ってきたけど、できなくてオレは10年間落ちぶれてアムスでじっとしてたんだけど、そういう心構えはスゴいよ。でもな、東京から何を発信するんだ？ 発信するものがどこにあるんだ？」その前に、東京で発信しようと思ったら、東京でまず作らないといけないんだよ、ってオレは言ってやった。
東京発信は上等な考えだ、でも自分たちのネタがなかったらどうやって発信するんだ？ 毛唐のネタ持ってきて発信するのか？ そんなの発信とは言えないよね（笑）。やっぱり自分たちのネタしかないんだよ。いくら肉付けしたって、最初に骨をやったヤツの方が勝ちなんだ。骨がなければ人体も成り立たないようにね。
それぐらい西洋人は凄まじい発想でやってるわけだから、オレたちだって切り替えればそれぐらいできるはずだよ。東京発はいいけど、東京でまず何を発信できるのか？ 作らないといけないんだよ。オレは80年代にニューヨークから帰ってきて、必死になって東京発信って言ったけど、そのためには作らないといけないんで、本当にMade in JapanのIMAバンドっていうのをやってみた。でもそれがうまくいったのかどうか知らないけど、ああいう形になったんでオレはそれも捨てて、もう一回一人になった。またつき合いだしたけどね。時代が流れたせいかどうかは知らないけど。
一種、弁証法みたいになってて、アメリカに行ってしこたまやって、アメリカの連中とまみれたのに、突然アメリカやヨーロッパのミュージシャンに「Fuck! No!」と言って、純粋日本人バンドを作って、っていうのは正・反・合に近いよね。一回やって、バーンと打ち消して。
でもまたそうやって時代が経巡ってきたら、今度は否定していたと言うか、やらないよって言ったビルやジョン（・ゾーン）ともう一回やりだすし、他に日本でもやるから、やっとオレも人間的にはバランスがとれてきたのかな、と自分では思うんだけど（笑）。基本的には一緒なんだけどね。そうやって、ありがたいことにどうも来年あたりからは本当の意味で、国や国籍を超えた連中とのやり方と、日本のやり方と二つ同時進行できそうで、面白いなと思ってるよ。
オレが本当にとことん集中してやれるのは、これから10年だと思ってるから。10年たったらオレも65になるから、そこからもう一回集中できるかどうかは分からない。でもこれから10年は必死に動けると思うから。でもその後は、オレ自身は何も分からないから、誰かがやるんだろうね。でもその誰かに渡せるぐらいのところまでは、突っ走りたいと思ってるよ。
