-Interview with Toshinori Kondo (2004.11.28)-


... Fascism of Money ...

Kondo : 世界がここまでトチ狂ってきたとすると、その理由はそんなにたくさんあるわけじゃなくて、一つはこの世界の金融システムというものが完全におかしくなってるんだよ。もう一つは、やっぱり人口の増加だよ。20世紀の始まりに16億だったのが、20世紀に第一次・第二次、これだけの強烈な戦争をしたにも関わらず64億超してるんだから。これはもう本当に危機だよ。昔は1.6人で食えばよかったのが、このままいったら同じ量で6.4人ぐらいが食わなきゃいけない、64億ってことはね。それはシンドいで(笑)。

 オレは経済の専門家じゃないから正しいことは全然分からないけど、今の金融システム自体がすでに崩壊してるんじゃないか? それを言えないから必死になって取り繕ってるんだろうけど、もう遠からずこの金融システムはクラッシュするか、誰か非常に優秀なヤツが登場して軟着陸させるか。それでユーロはなんとか軟着陸させようとしてるのか、よく分からないけど。

 ハゲタカファンドなんて名前をつけられてる連中、デリバティブでやってる連中はどれだけの金を動かしてるのか。例えば今中国経済がメチャクチャ繁栄してるって言うけど、あれは中国という国が自助努力をして自分たちの「元」という金をものすごく貯めて、自分たちが投資して中国経済を潤してるわけじゃないからね。海外のハゲタカファンドとかの、しこたま金を動かしてる連中が「おっ! 中国は投資先としてオイシい」っていうんでその国際マネーがブワーッと中国に投下されてるから、人工肥料で突然人工栽培の花が咲いてるだけで、その肥料をバッと引き上げたらあっという間に中国の花なんか枯れちゃうよ。

 今それで中国の鉄の生産は日本を抜いて、中国の中で生産される鉄の量は世界一になっちゃってる。だけど、鉄鉱石がなかったら鉄は作れないわけだ。鉄鉱石を握ってるのは世界でたった3つの会社だからね(笑)。そいつらが仕掛けてるんだよ。しこたま鉄の値段を上げて儲かってる。

 話はちょっとずれるけど、11月に京都大学に行って、西部講堂ではしょっちゅう演奏してたけど、いわゆる学部と教養の方の本舎の中では卒業してから1回も演奏してなくて、32年ぶりに教養の中で演奏したんだ。京大の教授とかがいっぱい来てて、オレは演奏するだけでいいよって言ったんだけど何か喋れって言われたもんだから、喋るとなると学生時代のことを思い出すからね。

 とにかく、明治以降第二次世界大戦までは、「富国強兵」っていうキャッチコピーで国民が動いたわけだ。それで日清・日露は勝ったけど、「富国強兵」ってコピーは第二次世界大戦で負けちゃったからもう使えなくなった。第二次世界大戦後は経済立国で行くってことになったから、「一流大学から一流企業へ」っていうキャッチコピーで日本国民を動かしたわけだ。でもその「一流大学から一流企業へ」っていうコピーも10年前のバブルの崩壊で終わっちゃったわけだよ。それで京大の教授や東工大の教授にオレが言ってやったのは、「ところで皆さん、この10年間に新しいキャッチコピーは考えましたか?」。今日本が路頭に迷っているのは、次の新しいキャッチコピーがないわけで、どうですかって皮肉を込めて言ってやったんだけど(笑)。

B : 何か言ってきましたか?

Kondo : いや、なんか知らんけど終わったあと名刺いっぱいくれたけど(笑)。本来は、そんな国民のキャッチコピーはいらないんだよ。それぞれが自由闊達に生活してればいいんだ。

 何か日本人ていうのは、そういう一つの目標を与えられればまっしぐらっていう性格がある故かどうかは知らないけど、そういうキャッチコピーがなくなったら路頭に迷うってところがあるみたいで。それ自体がオレには不思議で、「ない方がいいじゃん」って思うんだけど。その時にもその教授たちが一人でもいいから「近藤さん、ない方がいいんですよ」って言ったら「ああ、そうだよそうだよ、オレもなくってやってるんだから」って言うんだけど、黙ってたからね(笑)。

 でも今の親たちは、まだ「一流大学から一流企業へ」っていう価値観を捨てきれないわけだ。だから子供たちにヘンな塾に行かせたりしてる。それはもう完全に時代錯誤だよ。子供が犠牲になってるわけでしょ。子供たちは敏感だから分かるよね。理屈は言えないけど感じるよ。だから子供たちは当然、「何言ってんだ」と思うからフリーターになったりする。オレはそれは上等だと思う。

 だって、民族的なエネルギーとして、2世代が男の子も女の子も学校を卒業したらベルトコンベアに乗せられるみたいに企業にボーンと放り込まれるシステム、まあ初めは女の子は主婦しなさいって言われてたけど、日本経済がこれだけ大きくなって、ある時期から女の子も労働力に取り入れないといけないということになって、女の子もドンドン会社に入れ始めたじゃない。ということで、もう新卒者の80%ぐらいが会社に就職するような社会を作った。それはアメリカでもヨーロッパでもあり得ないんだよ。そんな高度資本主義か高度会社主義か知らんけど、そういうのは1世代は続いても、その子供たちがまたそれをやったら、民族の血、家族のエネルギーってものが本当に弱まるよ。だから2世代も続けたらダメなんだよ。

 だから今子供たちは無言の反乱のようにフリーターになったりしてるのは、オレは上等だと思う。国の設計図が間違ってるんだから。逆にそこまで従順になって「ワタシたちもお父さんやお父さんのように会社入ってまっしぐらに働きまーす」なんて言ったものなら、本当にこれから30年後、50年後にもっとひどくなるんだから。それに比べたら彼らはまだヤバいと感じてて、次の生き方は見つからないかもしれないけど、最低でもそれに対して異議申し立てをしてるんだから、オレは上等だと思う。

 それ以上の、次に生きる指針ていうのは、大人たちがちゃんと考えて一つの決断を下さないと。でも大人たちもそれをやらないから、当然子供はもっと暴れちゃうよ。暴れて上等だよ。

 日本民族ってのは……まあ日本民族なんてものはなくて、いろんなヤツらが住んでるのが日本列島だけど、地球という観点から日本を見たら、日本人が他の民族に比べて優れている部分があると思うんだよ。それはやっぱりある種の技術力だと思う。日本列島に住んでるヤツらって必死になってそれをやるんだよね。で、実際にそれに到達するんだよ。それを考えれば、日本って国はずっと技術立国でやればいいんだよ。ユダヤ・アングロサクソンみたいなやり方を真似しようとしたって、民族の成り立ちから違うんだから。でもアングロサクソンやユダヤが逆立ちしたってできない、そういう技術はあるわけだからね。それを武器にするしかないんだよ。

 21世紀は、環境技術っていうのは絶対に武器になるから。原爆持ってる以上に武器になるから。絶対中国もあと10年以内に環境もパンクするだろうし、地球レベルでも環境問題は現実に起こってるし。水素電池にしても何にしても、環境技術は日本の企業ががリードしてるはずだからね。

A : つい最近も、ポルシェが日本の自動車会社と、ハイブリッドカーの技術で提携するってニュースがありましたね。

Kondo : 政府を嘆いてもしょうがないけど、今回もイラク戦争に使った1兆5千億円の金を、環境技術とオレたちミュージシャンにくれれば日本も幸せになると思うんだけどね(笑)。

A : 経済で言うと、本来はモノ作りできちっとお金を稼いでいく路線にすべきで、株とかマーケットとかのような形で、取引上の利ざやを吸い上げていくようなやり方が経済をおかしくしてる、という指摘もありますね。

Kondo : キリスト教でも、ピューリタンなんかは儲けることは良くないという考えもあったし、ユダヤ教においても49年に一回は全部借金をチャラにしようというシステムがあるし。ここまで経済に目が眩んだのは人間の歴史の中でも今が一番凄いんじゃないかな。なんでここまでトコトン、身も心も金に縛られるようになったのかよく分からないけど、見事に金に縛られちゃってるよね。

 やっぱり、人間をコントロールしようっていうことでは、ヒトラーのやり方が世界共通なんだよ。ファシズムというか全体主義。人民に対して恐怖心を持たせる。恐怖心を持たせれば、それが元になって人民をコントロールできるんだよ。今の日本を見てると本当に全体主義だよ。なぜかと言ったら、若い連中がみんな言ってるもの、「金がない、金がない」って。金がない事が怖いんだよ。恐怖心になってる。それで人間を動かそうとしてるのは、ファシズムだよ。民主主義じゃないよ。

 昔だったら「金がない」っていうのは若い奴らだったら当たり前で、金がないってのをヘソで茶を沸かすみたいにゲタゲタ笑いながら好きなことをやってるのが若者なのに、今や若者でさえも「金がない」ことでブルーになってるとすると、洗脳システムもここまで上手になったかと思うよ。