-Interview with Toshinori Kondo (2004.11.28)-


... After The Festival ...

A : 広島での「世界聖なる音楽祭」からは、2001年の6月でしたからもう3年以上たってしまったわけですが。

Kondo : そうだよね。もう3年半だね。

A : あの現場に居合わせることができなかった人たちというのももちろんたくさんいたわけで、何かしらCDなり映像なりという形でまとめられるのを心待ちにしている人というのも多いと思うんですが、そのあたりの現状を教えていただきたいんですが。

Kondo : 全ては、オレ一人がやるしかないんだよ。それがオレの一番切ないところで、あの宮島の音楽祭が終わった後も、オレはあのビデオの映像等を処理したいから、かなりお金集めに奔走したんだよ。半年間ぐらい。でも誰もどこも貸してもくれなかったし、お金の融通が全然つかなかった。

 それで一つなるほどなと思ったのは、オレ自体があの時はもう10年ぐらい日本での活動をしてなかったから、俺が何をしてるかもみんな知らなかったわけだ。そこで一つ反省したのは、オレ自身が活動を再開して、近藤等則はどういうことをやるミュージシャンなのかってことをもう一回世の中の人に知ってもらわないと動きがとれないんだなってことが一つ勉強になった。

 それもあって、去年から「The 吉原」を作ったりして、もう一回オレはまあ冗談半分に「社会復帰のリハビリを始めたんだ」って言ってるけど、実際半分そうで、オレの生き方を見てもらった上で、でしかないかな、と。それにはまだ時間がかかるだろうと思ったから。去年・今年・来年と、3ヶ年社会復帰リハビリ計画をやる(笑)って言ってるんだけど。それで近藤等則ってミュージシャンがああいうヤツかということを日本の人たちがまた知ってくれれば、そうしたらまた「オレはこういうことをやってるんだけど助けてくれませんか」って言ったら多少は反応もあるのかな、と。

 それともう一つは、そうやってオレが去年から活動を再開してみると、ものすごいスピードで「CDが売れなくなった」とか「デジタル配信になる」とか、グチャグチャになってるじゃん。突然また強烈な過渡期になってる。3年前まではまだ平穏にCDは売れてたわけでしょ。それが去年、一昨年あたりからブァーンと落ちちゃって。だからそういうソフトを作ってる連中も「売れるか売れないか分からないものには金出さない」っていう、サイフの紐が非常に堅くなったね。レコード会社自体も2000億の売上げダウンでガタガタしてる。タイミングとしては非常に悪いわけだよ。

 あの当時にはビル・ラズウェルたちも多少動いてくれて、アメリカの方が多少は金を出す、という話も来たんだ。でもその時にはオレはすぐ「I don't know, man」て言った。それは、アメリカの金でやりたくなかったんだ。日本の金であれをまとめて、本当の意味で日本発であれを出したい、っていう欲望があって。アメリカから金をもらって権利を渡すと、あいつらが全部握っちゃうわけだよ。それが嫌だったからオレはヘソを曲げてたんだけど、来年にはひょっとしたらアメリカから金をもらうかもしれない。それでも、来年がもう限度だからね。本当は日本の金であれを編集したいんだけどね。今の今でもそういうチャンスを待ってるんだけど。でもオレは基本的には楽天的な人間だから、来年にはなんとかなると思ってるけどね(笑)。

 あの音楽祭のときにも、舞台とかにいろんなお金が発生して、それは借金になったわけだけど、そういう宮島に携わってくれた連中はその借金をずっと待っててくれて、最近そのうちの一人と話したら、とにかくオレが音楽活動を再開したんで、それを楽しみにしてる、と。それでもっともっと動いてくれればそれが一番いいんで、その中でお金が入ったときに返してくれって言ってくれて、本当に嬉しいなと思ってね。

 来年はきっとできるとオレは思ってるよ。オレも基本的には原理主義みたいな人間で(笑)、ハードコアをずっとやってるからアレだけど、直感的に来年はどうもアメリカ通いすりゃいいのかな、って半分思ってるけどね。アメリカは本当に嫌なんだけどね。

B : なんでそんなにアメリカが嫌なんですか?

Kondo : だってアメリカに行ったら、本当に日常の生活のレベルで悲しくなっちゃうよ。笑い話というか、5年ぐらい前にシカゴでペーター・ブロッツマンたちと演奏してて、1週間ぐらいシカゴのホテルに泊まってたんだ。それで朝、ホテルの下の喫茶店でお茶なんか飲んでたら、ランニングして汗みどろになった白人のお姉ちゃんが駆け込んできて、こんなデカいアイスクリームを食うわけだよ(笑)。でケツ見たらこんなに大きいんだよ。あれ見て悲しくなるね、オレなんかは(笑)。もう、呆れるのを越して悲しくなるよ。悲しくならない?

B : 何のために走ってるんだ、ってことですか?

Kondo : アメリカ人の愚かさって、あそこまで愚かなのかと思うと、もう矛盾なんて言う以前にホント悲しいよ。もう一刀両断、「お前、アホか!?」ってヤツらが「ワタシ努力してるのよ」って顔でアイスクリーム食ってるんだから、よく分からないって言うか。それが白人の中産階級のお姉ちゃんお兄ちゃんのレベルで、逆に黒人の連中といったら、グロッサリーストアに行ってジャンクフードをこんなに買って、こんな大きなボトルのコカコーラを買ってきてガボガボ飲んで、で、なおかつ俺がニューヨークに住んでた30年前と、パートタイムで全然賃金上がってないんだからね。パートタイムのギャラとしては安くなってるぐらいだって。
 そんな話聞くと、本当にやりきれないよ。「一体なんやねん、ここの国は」ってね。高度資本主義の一番代表のアメリカが、中途半端に金持ってるヤツらは完全に狂った生活を送るし、それでマイノリティの連中は思いきり労働条件も悪くて、1%か2%のヤツだけが50%以上の富を持ってる国に、正直言って行きたくないよ。ブッシュがいるとかいないとか言う以前に。