-Interview with Toshinori Kondo (2005.9.4)-
... Melody and Improvisation ...
Kondo : 今年は、ジョン・ゾーンのレーベルから「FUKYO」ってのを出したじゃない。あの辺から今年は始まってるんだけど、実はあれは７年ぐらい前にジョンちゃんからNYでレコーディングのギャラをもらっててね。「コンドー、ソロのアルバム作れ！ 今は全然仕事してねえんだろ」って言われて「よく知ってるねぇ（笑）。じゃあ金くれよ」って金もらって、それから、ベルリンでライブやったテープを１回だけ送ったんだけど、ジョンが「気に入らない」とか言って。じゃあ勝手にしやがれ、って思ってたんだけど、去年ジョンちゃんと会うことになったから（テープを）作って渡したら、今度はジョンが逆に気に入って、「今までで一番いい」とか言って、それで「FUKYO」を出したんだ。
それと、今年の正月にフッと「そうだ、今までアムステルダムで勝手に吹いてきたソロのトランペットの中から、一回選曲してみよう」と思って、そのテープを引っぱり出してきて正月の間ずっと聞いて、それで「Silent Melodies」っていうタイトルを自分で勝手につけて、60分ぐらいのアルバムとして選曲して作ったんだ。
それでオレにとっては、ソロの作業はジョン・ゾーンのレーベルから出した「Fukyo」みたいなやり方と、「Silent Melodies」みたいなやり方と、この２枚のイメージだな、と思って。もちろん「Silent Melodies」はまだ発表してないけど。
今年はなぜか、そういう「メロディー」の年なんだね（笑）。
—「Fukyo」はむしろ……
Kondo : サウンドだけどね。
—あれはなかなか、初心者には取っ付きづらいというところもありますが。
Kondo : あれは、ジョンちゃん達と昔やってたフリー・インプロビゼーションだからね。
—あれは昔、NYで近藤さんがレーベルを興してインディーズで出した「Fuigo From A Different Dimention」を思い起こさせるというか、相通じるところがあるように思いました。
Kondo : ジョン・ゾーンと、去年の９月だっけ？ ピットインで何十年ぶりに演奏して、でも演奏し始めた瞬間にジョンもオレもステージで分かり合ったと思うけど、若い頃一緒にNYでやったサウンドと一緒だし。
でもビル・ラズウェルにしてもジョン・ゾーンにしても、ミルフォード・グレイブスにしても長い付き合いだよね。ミルフォードなんか30年ぶりぐらいだからね。
—去年の９月にやったピットインのあのライブは、特に録音等はされてなかったんですか？
Kondo : いや、してるよ。テープ誰が持ってるんだろうな。ビルに渡したのかな。
—あのライブ音源は、ビル・ラズウェルのマニア等の間で「欲しい！」という声がかなり多いんですよ。
Kondo : 去年から今年にかけてずいぶんライブやってるけど、今年の２月だっけ？ 山木秀夫と、キーボードの小島（良喜）君とでレッドシューズでライブやったじゃない。そんなのも、全部録ってあるんだよ。山木と小島とオレとで、180のBPM流したりしてね。
—そういう音も、ライブラリーとして出していければいいですよね。
Kondo : そうそう。まさしくその通り、KONDOサウンドライブラリーとしてね。もうCDという概念を捨てて、作った音をそのままライブラリー化すればいいわけだよ。それで聴いてくれる人が何曲か集めて、１枚のCDのイメージを作ってくれてもいいけど。ライブがあれば、ライブを流せばいいし、１曲できれば１曲を流せばいいし。で、その中から好きなのを、ライブラリーだから図書館から借りるみたいにしてデータを借りてくればいいんで、それに課金するのか、初めはタダにするのかはオレは分からないけど。現実的に、もうそれ以外ないよ。
もう30年以上音楽活動してるから、莫大な量になってるんだよ。知らないうちに貯まっちゃってるんだ。まだこれからもいっぱい貯まるし。でも、そういうデータベースがいいのは、20年前の音源だってすぐパッと、どんな過去にでも飛べてデータを読み出して聴いてみることができるからね。
オレの場合は、この20年間の蓄積である程度海外とのネットワークがあって、日本だけじゃないから、アメリカ合衆国、EU、日本と大まかにこの３箇所にサーバーを置いておいて、３箇所にアクセスできるようにしておけば、ヨーロッパの連中もアメリカの連中もアクセスできるわけじゃない。そうしたら、馬鹿にならないよ、絶対。１曲を百ヒットしてくれる、つまり100人がある１曲にアクセスしてくれるだけでも、オレの場合は500曲ぐらいあるわけだから、５万アクセスが最低見込めるっていうんだから。多摩川沿いにブルーテントの家が建つなぁ（笑）。
