home > interviews

... "Blow The Earth" in Japan：2 ...

Q : 日本ではスケールを小さく感じてしまうというのも含めて、「地球を吹く」という形でいろんな場所に行って演奏するというのは、「こんな曲を吹こう」と考えてやってるわけではなくて、その場所のバイブレーションを感じるままに演奏してるから、自然にそうなってしまう、ということなんですか？

Kondo : で、ありたいよね。本当はね。オレがラッキーだったのは、即興演奏だからね。譜面を弾く、吹くミュージシャンだったらそうはいかないだろうけど。即興演奏をずっとやってきてたから、もうとにかく自然の中に飛び込んで、感じるままを吹いてみようと思ったんだ。
　でも、「地球を吹く in Japan」の場合は、人（観客）が来るということで、事前にシーケンサーを用意したり、とかも今は試みてる。結果として、それがいいのかどうかは、まだオレもそこの部分は手探りなんだけど。
　この前は、富士見高原に音楽を作るマシンを持っていって、そこで（シーケンスを）作って、吹いてみたりしたんだけどね。
　この次は、そこの現地の石を叩いてその石の音をサンプリングして、それでやってみようかな、とか思ってるんだけど（笑）

　オレ一人の場合は、本当にもう「関係ねえ、とにかく自分が気の向くままに」って、「地球を吹く」をやってきてた。
　イスラエルのネゲブ砂漠から始まった「地球を吹く」の音は、まだCDにもしてないんだけど、実はもうCD1枚分にまとめてはあるんだ。
　それを久しぶりに全部聴いてみたら、やっぱり面白いのは、「ああ、あの場所でなかったら吹けなかっただろうなあ」っていう演奏になってる。その場所によって、何か違うんだよ。だから、これは面白いな、と。
　当然意識はあるし、意識はしてるけど、無意識のレベルがかなり関与してるんだろうね。インプロヴィゼーションの場合は特にそうだろうけど。

Q : 今回、日本で行ってるものについてはお客さんもその場に来て、半分ライブのような形式でやってますが、その意味では、近藤さんが感じて吹いているのと同じ何かを観客も共有してることになりますね。CDやビデオにまとめたものとは違う何かがそこにはあると思いますが。

Kondo : その現地に来てその五感、六感を通じて感じたことを、そのままCDやDVDで体験はできないよね。それはもう絶対に無理だ。
　残念ながら、CDもDVDも二次的メディアだからね。

　面白い例の一つが、六本木ヒルズに住んでる連中が金持ちだって言うじゃない。まあ、六本木ヒルズの中にも、住んでる彼らの部屋にもオレは行ったこともないんだけど、多分、全部空調で、窓も開けられるかどうか分からないような所に住んでて。
　片や、もし違う金持ちがいたとしたら、エライ気持ちのいい場所に、日本式の家を建てる、と。障子を開けたら風が入ってくるし、きれいな庭もある。どっちが贅沢なんだろうね？　気持ちよさにおいて、ね。
　そこから言うと、今のサラリーマンが鬱になりやすいなんていうのも、オレにはよく分かるんだよ。大学卒業して、そのまま企業に入って、毎日空調と蛍光灯の中で、昼間にずっと過ごしてみろよ。やっぱり、人間のバランスは崩れるとオレは思うよ。

　マンションに住んでるヤツはすぐ窓を閉めるけど、オレは閉めるの大嫌いなんだよ。窓を開けて、空気が流れてないと嫌でね。
　会社で、人工的な環境の中に住んでて、家に帰ってもマンションで、それも強烈に密閉型の空間でね。だから、体の方が、「オレの体をもっと気持ちいいところに置いてくれ！」って悲鳴を上げてるんじゃないのかな。

　この前の富士見高原のときにものすごく楽しかったのは、三日間、North Faceに大きなテントを借りて、そこにスタジオを作ったんだけど、何百億の金持ってるヤツでも、あそこに別荘を建てることはできないでしょ。でもオレは、あそこに三日間、別荘をタダで建てたんだからね（笑）。こんな贅沢はないな、と。

Q： 「地球を吹く」等の企画でそういう場所に行く以外に、アウトドア的な経験はあるんですか？

オレは、子供のころの育ち方がそうだったよ。瀬戸内海に面したところで、塩田で、目の前が来島海峡で。子供のころから、朝から晩まで外で遊んでたよ。家の中で遊んだ記憶なんてそんなにない。夕方になると家に帰ったけど。自転車を買ってもらったら、すぐ近くに橋山公園ていう公園があるんだけど、そこへ必死に登っていってね。一番上に行って瀬戸内海を見つめて、「ああ、気持ちいいな」って。夏になれば当然毎日泳いでたし、子供のころの生活は、そういう、半分アウトドアライフだよ。

　あと、オレは靴もベルトも大嫌いでね。体を締め付けるものがものすごく嫌いだった。だから下駄の方がよかったし、５歳ぐらいのころからオフクロに頼んで吊りバンドのズボンで（笑）。だから、今でもオレは寝るときは下半身裸じゃないとイヤなんだ。パンツはいて寝るのも嫌（笑）。

　アウトドアといっても、もうひとつのやり方としてはレジャーというか、「自然に親しむ」って言ってキャンプ張って、いろんな道具持っていってバーベキューをしたりするじゃない。ああいうのも悪いことではないけど、自然とのバイブレーションの合わせ方がもったいないな、と思ったりはするね。